ボールバルブは OEM、ODM、それともプライベートラベル?
要点
OEM、ODM、プライベートラベルの違いは、設計と金型を誰が持つかにあります。バルブそのものはまったく同じでもかまいません。OEM は図面が発注側のもので、工場は図面どおりに作ります。ODM は設計が工場のもので、使用条件に合わせてシート、端接続、刻印を調整します。プライベートラベルは工場のカタログ品に、発注側のブランド、包装、文書を付けたものです。どのモデルでも避けて通れない点が二つあります。本体の刻印を MSS SP-25 に適合させるなら製造者の名称、商標または記号が必要で、自社ブランドとの並べ方は規格の条文で確かめることになります。また第三者認証は申請した会社に帰属するため、自社名で販売するには認証機関のマルチプルリスティング手続きが要ります。UL のマルチプルリスティングが対象とするのは、元の認証品と同一の製品です。
同じ言葉が、立場によって逆を指す
バルブ工場に OEM の顧客はどこかと聞けば、製造を請け負っているブランドの名前が返ってきます。ブランド側に OEM の取引先を聞けば、返ってくるのは工場の名前です。どちらも誤用ではなく、同じ取引関係を両端から呼んでいるだけです。「OEM のボールバルブを作りたい」とだけ書いた引き合いでは、工場は何を求められているのか判断できません。
プライベートラベルとホワイトラベルも同様で、同義に使う供給者もいれば、あえて分ける供給者もいます。どちらの語にも規格上の定義はありません。
実務で役に立つのは二つの問いです。設計は誰のものか。金型は誰のものか。どちらも答えがはっきりしていて、契約書に書き込めます。
三つのモデルで変えられる範囲
| プライベートラベル | ODM | OEM | |
|---|---|---|---|
| 変えられるもの | ブランド、包装、文書 | シート材質、端接続、ハンドル、刻印、場合によりポート径 | 図面上のすべて |
| 新規金型 | 不要 | 鋳物の外形を変える場合のみ必要 | 本体が既存品でなければ必要 |
| 最小発注数量を決めるもの | 包装と刻印の段取り替え | 加工段取り、場合により一溶解分 | 溶解単位と金型の償却 |
| 納期を決めるもの | 在庫とラベル貼付 | 加工プログラム、シート材料の入荷 | 型づくり、続いて初回注湯 |
| 工場に渡すもの | アートワークとラベル仕様 | 使用条件 | 管理図面とリビジョン |
| 設計変更の決定権 | 工場 | 工場。契約にあれば通知義務 | 発注側 |
| 独占 | 別途交渉 | 調整した部分は交渉できる | 図面そのものが発注側のもの |
見落とされやすいのは「設計変更の決定権」の行です。プライベートラベルと ODM は工場の設計を使うので、工場は工程を変えたりシートの調達先を替えたりでき、契約に書かれていなければ通知する義務はありません。カタログ品であればそれは妥当な扱いで、工場がプライベートラベルの顧客ごとに設計を凍結するわけにはいきません。ただし製品に認証が付いている場合や、下流の顧客が品番を承認済みの場合は、変更通知を契約に入れておく必要があります。
何を変えると、どの層に響くか
費用と納期が分かれるのはここです。変更が刻印、部品表、加工、鋳物のどの層に落ちるかを見てください。
| 変更内容 | 影響する範囲 | 該当するモデル |
|---|---|---|
| ブランド(レーザー刻印、タグ、ハンドルの印字) | 金型も加工プログラムも変わらない | プライベートラベル |
| シートまたはシール材質 | 部品表が一行変わる。工場で使ったことのない銘柄なら材料供給者の認定が一段加わる | ODM |
| ねじ形式(例:NPT から BSPT) | 加工プログラムとねじゲージ。鋳物は変わらない | ODM |
| ポート径 | 加工と治具。ボールやシートまで替わることがある | ODM |
| ブランドを本体に鋳出す | 金型の修正が必要 | ODM または OEM |
| 本体形状 | 新しい金型、新しい湯道と押湯、初品検査のやり直し | OEM |
分かれ目は最後の行です。本体形状に手を入れた時点で案件は OEM になり、日程は型づくりで決まるようになります。型のリードタイムを左右する要因は最小発注数量を左右する要因と同じで、なぜ OEM ボールバルブには最小発注数量があるのかにまとめています。ブランドを鋳出すことがなぜ型の修正にあたるのか、修正後の型が誰のものになるのかはプライベートラベルのバルブ案件で金型は誰のものかを参照してください。
本体の刻印
注文書または製品規格が ANSI/MSS SP-25 による刻印を求めている場合、本体には製造者の名称、商標または記号が必要です。寸法や形状が許さない場合は除かれます。ほかに材質、圧力定格、呼び径、必要に応じてねじの識別が入ります。溶解番号は製品規格や材料規格が求める場合に限られるため、小口径のねじ込み弁には入っていないこともあります。
プライベートラベルの案件で本当に問うべきなのは、自社ブランドの商標でこの要件を満たせるかどうかです。SP-25 の 2018 年版は名称、商標、ロゴ、記号の刻印に関する指針を改訂しており、その条文は規格の本文にしか載っていません。答えを出すには、注文書が指定する版の原文を読んでください。要約に頼るのは避けたほうがよく、この記事もその要約の一つです。
もう一つはスペースの問題です。
鋳物の刻印座は型を作るときに設計されます。OEM なら型を起こす機会にブランドも一緒に入れられます。プライベートラベルと ODM は既存の本体を使うので、刻印座には工場の刻印がすでに入っています。型を直さない限り、ブランドを置ける場所はレーザー刻印、タグ、ハンドルに限られます。
認証は申請者に付いて回る
UL や CSA のような第三者認証は、申請した会社のものです。対象は特定の製品で、特定の拠点で製造されることが前提になっています。製品のブランドを替えても、認証までは移りません。
認証機関はこうした場合の手続きを用意しています。UL ではマルチプルリスティング(Multiple Listing)と呼ばれ、ある会社が認証を取得した製品を別の会社のブランドで販売するとき、販売する側がマルチプルリスティー(multiple listee)として自社のファイル番号を受け、UL のオンライン認証ディレクトリに掲載されます。ディレクトリ上では元の申請者が誰かは分かりません。Intertek の ETL にもマルチプルリスティー契約があり、名称や条件は機関ごとに異なります。
注意点は二つあります。まず、これは両社が申請して初めて成り立つもので、注文書にプライベートラベルと書いただけでは成立しません。次に、UL のマルチプルリスティングが対象とするのは元の認証品と同一の製品です。ODM でシート材質や端接続を変えた製品がなお同一といえるかは認証機関が判断します。工場にも買い手にも、それを決める権限はありません。
この確認は発注前に済ませておくべきものです。証明書が実際にどこまでを対象にしているか、どう調べるかはバルブメーカーの認証は実際に何を証明しているのかに書いています。
材料の証明書も同じ考え方です。EN 10204 の検査証明書 3.1 は製造者が発行し、製造部門から独立した権限ある検査代表者が確認するもので、記載されるのは製造者の名前です。プライベートラベルで替えられるのは包装までで、この文書はその範囲に入りません。
引き合いに添えるもの
| モデル | 工場が必要とするもの |
|---|---|
| プライベートラベル | カタログ品番、ベクター形式のアートワーク、ラベルと外装の仕様、刻印位置、文書の言語 |
| ODM | 使用条件:流体、圧力、温度、作動頻度、端接続、必要な認証、対象市場 |
| OEM | リビジョン付きの管理図面、材料仕様、受入試験の規格と版、刻印レイアウト、金型の帰属 |
時間をいちばん節約できるのは ODM の行で、いちばん省かれやすいのもこの行です。競合品の品番だけを添えた引き合いでは、工場は使用条件を逆算するしかなく、見積りは前提だらけで戻ってきます。流体、圧力、温度、作動頻度をそのまま書いておけば、近いプラットフォームを持つ工場はすぐに当てはめられます。
実際の案件は二つのモデルにまたがる
三つの呼び方は所有を説明するには便利ですが、進行中の案件を説明するにはやや粗い道具です。
たとえば、本体とボールは工場のカタログ品で、設計も金型も工場のもの。シート材質は買い手が使用条件に合わせて指定し、端接続は買い手が求めるねじ形式に加工する。刻印、包装、文書は買い手のもの。商取引の上ではプライベートラベルと呼ばれる案件ですが、所有で見れば ODM です。違いが表に出るのは工場が本体を変えようとするときで、そこで買い手に発言権があるかどうかが分かれます。
案件は動きもします。最初はプライベートラベルで市場を試し、数量が伸びてからシートや専用の加工を指定し、やがて専用本体の型を起こすだけの量に達する。三つの位置をすべて通っても、案件名は最初から最後まで同じままです。
金型の帰属や独占の条項を最後の移行まで持ち越すと、その時点で品番はすでに買い手の価格表に載っていて、交渉の余地はいちばん小さくなっています。段階が変わるたびに、どの部品がカタログ品で、どれが指定品か、新しい金型は誰が払うか、変更の通知は要るかの四点を書面に残してください。
見積り依頼の前に答えておく五つの問い
- 手元にあるのは自社で管理している図面か、それとも要求仕様か。図面なら OEM、要求仕様なら ODM に向かいます。
- 本体形状は変えなければならないか。既存の本体で使用条件を満たせるなら OEM 案件にはなりません。注文書にどう書いても同じです。
- 金型は誰が払い、その後は誰のものか。型を起こす前に書面で決めておきます。
- 対象市場が求める認証は何で、誰が保持しているか。工場が保持しているなら、マルチプルリスティングの手続きを今から始めます。
- 工場が何かを変えるとき、通知を受ける必要があるか。必要なら契約に書き込みます。
モデルを正しく選んでも守れないこと
- 図面を持っていても、作れる場所があるとは限りません。OEM の図面は、鋳造、加工範囲、試験能力がそろった工場でなければ形になりません。
- 金型を持っていても、工程まで持っていることにはなりません。同じ型でも別の鋳造所に移せば別の鋳物ができます。どの初品検査をやり直すかはバルブ供給元を変えるとき何を再認定するのかにまとめています。
- 図面が独占でも、設計まで独占になるわけではありません。3ピースのステンレスボールバルブは新しい形状とはいえず、図面で守れるのはその部品そのものです。着想までは守れません。
- 本体に刻まれているのが自社ブランドなら、製品に問題が出たとき市場が最初に向かう先は自社です。試験記録は工場のファイルだけに置かず、自社でも控えを保管してください。
よくある質問
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参照規格: ANSI/MSS SP-25(バルブ、管継手、フランジ、ユニオンの標準刻印方式、2018年版)、EN 10204(検査文書の種類)、および UL マルチプルリスティングサービスの説明。
刻印要求は Manufacturers Standardization Society 発行の ANSI/MSS SP-25 から引用しています。認証機関により手続きは異なり、本稿のマルチプルリスティングの経路は UL が公表しているサービス説明と規約に基づきます。依拠する認証を保持する機関で同等の手続きをご確認ください。プライベートラベルとホワイトラベルは本稿が引用するいずれの規格でも定義されておらず、供給者により用法が一致しません。