フローティング vs トラニオン型ボールバルブ:構造・トルク・選定
要点
フローティング形ボールバルブは、ボールを2枚のシートだけで保持する。ライン圧がボールを下流へ押し、下流側シートが推力の全量を受け、その接触応力がシールを形成する。トラニオン形は上下のトラニオンでボールを軸受に固定して推力を吸収し、代わりにバネで付勢したシートでシールする。以降の違いはすべてこの一点から導かれる。フローティング形のシート荷重は口径の二乗に比例し、差圧にも比例するため、トルクはその両方に対して急激に上昇する。トラニオン形のトルクは比較的平坦で、各シートを独立してシールさせることができる。これがダブルアイソレーションの成立根拠である。どの規格も、どの寸法で構造を切り替えるかを定めていない。実務上の境界はClass 150および300でDN150からDN200の間にあり、Class 600以上ではより小径側へ移る。
フローティング形はどのようにシールするのか
フローティング形ボールバルブは、ボールが2枚のシートだけで保持され、流れ方向に短い距離だけ移動できる四分の一回転弁である。ステムはボール頂部の溝を介して回転を伝えるが、ボールを位置決めはしない。
弁を閉じると、差圧がボールの上流面に作用する。ボールは下流側へ変位し、下流側シートに押し付けられる。その接触応力がシールである。
したがってシール力はバルブ固有の性能ではなく、運転条件の関数となる。下流側シートに伝わる推力はおおよそ次式で表される。
F ≈ ΔP × π/4 × d² (d = シート内径)
ASME B16.34のGroup 2.2材料におけるClass 150、100°Fの定格275 psiを代入する。CF8Mはこのグループに含まれる。
| フルポート呼び径 | シート内径 | 275 psiで下流側シートに作用する推力 |
|---|---|---|
| DN25(1") | 25.4 mm | 216 lbf(0.96 kN) |
| DN50(2") | 50.8 mm | 864 lbf(3.8 kN) |
| DN100(4") | 101.6 mm | 3,456 lbf(15.4 kN) |
| DN150(6") | 152.4 mm | 7,776 lbf(34.6 kN) |
同一圧力において、6インチ弁がシートに与える荷重は1インチ弁の36倍になる。PTFEおよび強化PTFEの圧縮強度には限界があるため、口径と圧力の組合せがある水準を超えるとシートがコールドフローを起こし、ボールが食い込み、トルクとシート寿命がともに低下する。
これがフローティング構造の物理的な上限であり、境界が存在する理由でもある。
ボールをトラニオンで固定すると何が変わるか
トラニオン形ボールバルブは、上下2本のトラニオンによってボールを本体側の軸受に位置決めする。軸受が圧力推力を吸収し、ボールは移動しない。
シールは別の手段で得る必要がある。トラニオン形はシートリングを小さなピストンとして孔内に収め、バネで付勢し、シート背面に作用するライン圧で補助する。
仕様策定上、二つの帰結が重要になる。第一に、トルクはライン圧からほぼ切り離される。トルクの主因が圧力によるボールとシート間の摩擦ではなく、軸受摩擦とシートバネ荷重になるためである。第二に、各シートを独立してシールさせられる。これがダブルアイソレーションの機械的根拠である。
代償は複雑さである。軸受、シートバネ、シートインサート、キャビティ逃がし機構、そして同心度を要する加工面の増加。いずれも仕様を誤る余地も、製造を誤る余地もある部位である。
SPEシートとDPEシート
トラニオン形のシートには二つの挙動があり、その差がボディキャビティに閉じ込められた圧力の行き先を決める。
SPE、シングルピストンエフェクト、すなわち自己逃がし形。シートはライン側の圧力のみで付勢される。キャビティ圧力がライン圧を上回ると、シートがボールから離れてキャビティ圧をライン側へ逃がす。
DPE、ダブルピストンエフェクト。シートは両側から付勢されるため、キャビティ圧力はシートをボールへより強く押し付ける。シール性は高いが、自己逃がしは行わない。
これはAPI 6Dのアイソレーション区分に直接対応する。DIB-1はDPEシートを2枚用いるため、DIB-1弁には通常、外部キャビティリリーフ弁または本体の逃がし孔が必要になる。DIB-2はDPEとSPEを1枚ずつ用い、SPE側が逃がし経路となる。
境界はどこにあるか
これを定義した規格はない。API 608とISO 17292はいずれも両構造の金属製ボールバルブを対象としており、どちらも特定寸法以上でどちらを用いよとは規定していない。下表は一般的な実務であって、規則ではない。
| 圧力クラス | 通常フローティング形 | 通常トラニオン形 |
|---|---|---|
| Class 150 / 300 | DN150(6")まで | DN200(8")以上 |
| Class 600 | DN100(4")まで | DN150(6")以上 |
| Class 900以上 | 小径のみ | 実質的に全寸法 |
出発点として扱い、実際の運転条件と照合すること。全差圧を数か月にわたり受け続けるClass 300のDN100弁は、年に一度作動させるだけのClass 150のDN150弁よりも厳しい用途である。操作頻度、流体温度、加圧状態で閉止している時間のいずれもがこの線を動かす。
通常範囲を超える口径でフローティング形が提示されたとしても、それ自体が誤りとは限らない。PEEKや金属裏当てシートを用いて範囲を意図的に広げた設計もある。シート材質、設計検証を行った差圧、およびその差圧におけるトルク値を求めるとよい。
トルクはどう規定すべきか
操作トルクには三つの寄与がある。ボールとシート間の摩擦が支配的で、フローティング形では差圧に比例する。差圧こそがシール荷重を生むものだからである。ステムシール摩擦はほぼ一定だが、使用期間中にグランドを締め直すにつれて増大する。軸受摩擦はトラニオン形の主要因であり、圧力への感度は比較的低い。
圧力条件が示されていない最大トルク値は、使用できるデータではない。
求めるべきは、設計差圧における起動トルクと運転トルクであり、かつ使用温度の上下両端についてである。アクチュエータ選定では、表示トルクに対して安全率を見込むのが通例で、一般に25%から50%の範囲に収まる。加圧状態で長期間閉止する弁ではその上限側を取る。シートの応力緩和と固着により、起動トルクがカタログ値を上回るためである。ISO 5211が定めるのは取付インターフェースのみでトルクには言及しないため、両者は別個に規定する必要がある。
上限を決めるのはシート材質
シート荷重は口径の二乗に比例するため、ある口径と圧力においてフローティング構造が成立するかどうかはシート材質が決める。以下は連続使用の代表的な上限で、製造者と配合により異なる。
| シート材質 | 代表的な上限 | 高シート荷重下での挙動 |
|---|---|---|
| バージンPTFE | 200°C(392°F) | シール性は優れるが強度は最も低く、継続荷重でコールドフローを起こす |
| RPTFE(ガラスまたはカーボン充填) | 230°C(446°F) | 耐クリープ性が向上。口径や圧力が上がった際の標準的な選択 |
| PEEK | 250–260°C(482–500°F) | 高強度でフローティング適用範囲を拡げるが、トルクが増し、面粗さに敏感 |
| メタルシート | 300°C(572°F)超 | 荷重負担能力は最大。すり合わせが必要で、漏れ等級は緩くなる |
DBBとDIBの実際の意味
いずれもAPI 6Dに由来する用語であり、見積書でも仕様書でも緩く使われている。
DBB、ダブルブロック・アンド・ブリード。閉止位置において両端からの流れを遮断し、かつ2枚のシート間のキャビティを排出する手段を備えた単一の弁。キャビティ排出孔を備えた2シートのフローティング形はこれを満たしうる。
DIB、ダブルアイソレーション・アンド・ブリード。各シートが単独でキャビティ内圧力に対してシールする。キャビティ側からの圧力を保持できるシートが必要であり、フローティング構造はこれを備えない。
問題が生じるのは、意図はダブルアイソレーションであるのに仕様書にダブルブロック・アンド・ブリードと書かれている場合である。DBB、DIB-1、DIB-2のいずれかを明記すれば、この曖昧さは消える。
両規格が要求するステムの二つの構造
API 608とISO 17292は以下の二点を要求している。いずれも完成品からは確認できないため、購入仕様に明記する価値がある。
- ブローアウトプルーフステム。ステムを本体内側から挿入し肩部で保持する構造。加圧状態でグランドナットを外しても、ライン圧でステムが飛び出さない。
- 静電気除去装置。ボール、ステム、本体の間の導電経路をバネまたはピンで維持し、流れによって生じた電荷が絶縁されたボールに蓄積しないようにする。可燃性流体では必須で、追加費用も小さい。
見積の記載内容をどう検証するか
仕様をそのまま復唱した見積書は主張にすぎない。そのうち三つは独立に確認できる。
材質
EN 10204 3.1の材料試験成績書が証明するのは鋼の一溶解である。目の前の鋳物がその溶解に由来することまでは証明しない。完成した本体に対する携帯型分光計での材質確認(PMI)がこの隙間を埋める。そこで検出される置換は、まさに経済的動機のあるものである。CF8Mはモリブデンを含み、CF8は含まない。安価な合金に置き換えられた本体は、外観検査では永久に発見されない。
別途、鋳物を自社で溶解しているのか購入しているのかを確認するとよい。自社鋳造であれば材料記録は溶解から始まり、弁を出荷するのと同じ品質システムの内側に収まる。購入鋳物であれば記録は第三者の門から始まる。どちらの体制も成立するが、問題が起きたときに他社の協力なしにどこまで遡れるかが異なる。
試験
API 598はシェル試験とシート試験を定めており、どの供給者も実施していると答える。差が出るのは手順ではなく処理能力である。組立ラインに対して試験ステーションが何台あるか、そして試験設備の定格が、実際に弁を試験する圧力とは別にどの程度あるかを尋ねるとよい。設備の余裕こそが、顧客指定のより高い圧力試験をライン内で実施できるか、外注が必要になるかを決める。
校正
分光分析、硬さ、寸法、圧力のいずれのデータもこれに依存する。校正台帳の提出を求め、標準がどの認定機関に遡及するのかを確認すること。見積依頼書では一行にすぎないが、文書化された品質システムと装飾された品質システムを区別できる。
比較表
| 項目 | フローティング形 | トラニオン形 |
|---|---|---|
| ボールの拘束 | シートのみで保持、軸方向に移動 | 上下トラニオンで固定 |
| 圧力推力の受け手 | 下流側シート | トラニオン軸受 |
| シール荷重の源 | ボールに作用するライン圧 | バネ付勢シートと圧力補助 |
| 圧力に対するトルク | 差圧とともに上昇 | 比較的平坦 |
| 口径に対するトルク | 急上昇、シート荷重はd²に比例 | 緩やかに上昇 |
| 極低圧でのシール | シート予圧に依存 | バネが接触を維持 |
| ダブルアイソレーション(DIB) | 不可 | 可、DIB-1またはDIB-2 |
| 部品点数と補修の複雑さ | 少ない | 多い |
| 一般的な経済的適用範囲 | Class 150–300のDN150まで | DN200以上、または高圧クラス |
よくある質問
一文でまとめると:
構造を決めるのは口径ではなくシート荷重である。寸法の目安を当てはめる前に実際の差圧で推力を算出し、カタログの最大値ではなくその差圧におけるトルクを求めること。キャビティの隔離が関わる仕様では、DBB、DIB-1、DIB-2のいずれかを明記し、キャビティ逃がしの要否も併記する。DIB-1は通常、外部の逃がし機構を必要とするためである。境界より下では、フローティング形が構造として単純であり、多くの場合それが正解となる。
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参照規格:ASME B16.34(圧力-温度定格)、API 608(フランジ形・ねじ込み形・溶接端金属ボールバルブ)、ISO 17292(石油・石油化学および関連産業用金属ボールバルブ)、API 6D(パイプラインおよび配管用バルブ。DBB、DIB-1、DIB-2の定義の出典)、API 598(バルブの検査および試験)、API 607およびAPI 6FA(耐火型式試験)、ISO 5211(部分回転アクチュエータ取付)、EN 10204(検査文書の種類)。発行機関ページ:ASME、API。
100°Fにおける275 psiは、CF8Mを含むASME B16.34のGroup 2.2材料のClass 150定格です。CF8を含むGroup 2.1は同温度で285 psiです。シート推力の数値は上式によりフルポート呼び内径で計算した参考値であり、実際のシート内径は製造者により異なります。シートの温度上限は代表的な公表範囲であり、特定製造者の圧力-温度線図に代わるものではありません。フローティング形とトラニオン形の境界として示した寸法および圧力クラスの範囲は一般的な実務を記述したものであり、いかなる規格にも定義されていません。